2014年10月10日金曜日

2)名産にも上手いものあり〜ももと満月までの8日間。



山も頂上付近になって、一人セニョールが立ち上がりフルーツを差し出した。走っている車の前で、である。人間は車が止まると信じて疑わないポジティブシンキングをどうして戦争回避に利用できないのかと毎回思いつつ、苦笑いでセニョールを無視するもも。ちらりと見た感じでは、フルーツの他にも飲み物やスナックなどを売っている様子。こんなヘンピなところ、しかも止まろうかとも思わせない平凡な景色の道。セニョールの経営戦略を聞きたくなるが、スペイン語は分からないのでエアー納得して進む。

チェリゾーの工場がある、と言うだけでレンタカーでくねくね走って来た二人は、目的の地へ到着するが、ここで時計を見て愕然とする。スペインにはシエスタをする文化がある。午後お昼寝しちゃうために一時店を閉めるのだ。レストランやカフェは観光客の為に開いているところもあるが、普通の店は4時半まで開かない。ゆっくりランチをタパスしてトロピカルビール(普通のライトビール)とアグアコンガスで時間をつぶしても、まだまだ開店時間には間がある。しかも、そもそもそのチョリゾーの店がどこにあるのかわからない。

空港でかった「何でもトップ10シリーズ」のグランカナリアバージョンでは、この街のどこにその工場があるのか書いてなかった。何でもトップ10シリーズというのは、いささかドラえもんの学習マンガのようなタイトルだが、こういった本では藤子・F・不二雄はもちろん絵を描いていない。子供の頃はそれが何だか商業的で大人が自分をだまして「ドラえもんだよー漫画だよー面白いから読みなよー」と言いながら勉強させる姿勢に断固として立ち向かったものだ。要するに勉強しなかった。

トトロが自身の栄養源であると認めていないビールなのだが、地ビールがあるというので一本だけ買ったワインショップで試しにチョリゾーのありかを聞いてみたところ、ノーズヘアーの美しいスペイン人の店主が店の場所を教えてくれた。なんて優しいのだ。しかもその店の近くに「閉まっているけどチェリゾー人形が軽やかに踊っているウィンドーディスプレイ」を見かけているので、そこが店ではないのかと聞くが違った。街全体でそのチョリゾーをワッショイしているらしい。このチョリゾーは、ソーセージの様な形をしているが、実際にはペースト状のものをパンなどにぬって食べる。少々油っぽいがとても美味しいという珍しい「名産」だ。

確かにホテルの鎮座する街に戻ってみれば、スーパーの肉コーナーでも基本のこのチョリゾーが売られていた。ただし、数倍高い。
地元テロールでは、500g買って、2.80ユーロであった。1キロで5.6ユーロである。しかし、都会の街中だと1キロ12-14ユーロで売られている。グランカナリアに行くならテロールでチョリゾーを買うべし!!住所は C/Fuente De La Higera,4 CP.35330, Terorである。英語は話せるかと聞いてイエスと言ったのにまったく通じなかった店の人は写真を取ってもいいかとジェスチャーで聞くと、店の横に並んでる圧巻チョリゾーカーテンも見せてくれたのだった。行くべし、LOS NUECES。

すっかりトリップアドバイザーのような雰囲気から一気に脱出を試みる筆者をよそに、ももは道すがら、びわの木を見つける。見た感じはびわの葉にそっくりで、まだ実はない、というかもう終わっている。車をなんとかナダメて止めてもらい、びわの木の家の反対側の住人にジェスチャーでとってもいいかと聞くと「シーシー」いうので、何枚かかっぱらってきた。これを乾かせばびわ茶になる。何かと体にいいお茶らしく、しかもオロナインのように「何にでも効く=何ににも効かない」ではないという雰囲気ムンムンだ。ももの実家にも、ももが食べたびわの種から芽が出て大きくなり、今や小さいながらも実がついて近所のからすや小学生達につまみ食いされているびわの木がある。実家は土手の上にあるのだが、土手の下も敷地なので、植えてみたらなっちゃった、とはもも母の弁。だから堂々と誰かが採って食べられる。

チョリゾー街の前には、道端になっているサボテンの実も採取を試みるが、これにはもももまいった。大きいトゲならともかく、目に見えない程のトゲが手にささって、どこかに触れるたびに小さな痛みを感じる。そしてそれがよく見えない。最後には幻覚のような擬似痛も発生し、ももの心をとげとげと刺していたのだった。もう採りません、サボテンは。そんなに美味しくなかったし、種ばっかりで食べにくいしと一言多い嫌みを言って自分を満足させるのに長けた女が二日後に迎えるのは「死じゃないかと思う」出来事であった。

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