2014年10月28日火曜日

忙しくって、離脱に集中できない…


ああ、先週今週は忙しかった。今日は写真なし。

英語の学校では、テストに課題提出に忙しく、週末は旦那と「せめてインテリアをおしゃれにして、人に馬鹿にされない家に住もうキャンペーン」を実施したため、大量の服を整理して捨て(リサイクルの店にあげた)、キッチンのだっさい割れたランプを新しいの買える為に天井をペンキぬりしてランプを変え、退院してから初の着物出張セールと出張着付けに行き(もちろんみっちり練習しました)月刊少女野崎くんと黒執事Book of Circus全話を見たw
ああ、忙しかった。

28日間の幽体離脱トレーニングは上手く行かず、シーズン2に突入、でも最近二度寝してないので、いまいち効果がわからないってか他の事が忙しくて期待してる暇がなかった!これはいかん。

せっかく買った幽霊屋敷の本も、英語の課題図書で手一杯で読めてないし、せめて、今日届いた20gの種麹(結局20g全部送ってくれてありがとうママン!)のために逆算して白米と玄米を水につけてる最中。あー忙しい。

今のところ続いてるのは、砂糖断ちぐらいかしら。「やり続ける」より「やらな続ける」の方が、人間何かとやりやすいわよね。

さらに、そうこうしている間にストックホルムのキノコ狩りシーズンは終わろうとしていて、今日散歩がてら森に行ったけど皆無だった。突然終わるキノコシーズン。やだー怖いわ!本当に突然消えるかわ怖い。

あんまり今回は大した情報ないけど(今までも特にないけど)一つだけ特記するなら、今週はハロウィーンなのだ。スウェーデンでもハロウィーンじゃないけど、亡くなった人を追悼するためにお墓にいくお盆みたいな日が今週末ある。

この日は、近くの世界遺産である墓地にたくさんのろうそくが灯されて、とても幻想的な風景なんだけど、それになんとか便乗して、うちにも「何か、または誰か」来てもらえるように、おもてなしの家具を取り揃え中。目標は、スウェーデンの妖精さんまたはご先祖様と同居!スウェーデンスタイルのおもてなしで、テーブルセットを買いました♡あーますますリアル友達は作れなくなるなー。

2014年10月19日日曜日

味噌がないなら麹を作ればいいじゃないの。 byアヤーアントワネット



私はスウェーデンに来てからの4年、こっちで一度も味噌を買ったことがない。
来たばかりの頃は日本から持って来てた味噌で足りてたし(あまり日本食を作らなかったので)3年前から味噌を自分で手作りするようになったからだ。

思い起こせば、3.11。発酵食品の大切さに気がついた私は、米のとぎ汁乳酸菌ととりあえず作れそうな味噌に挑戦、なんともおいしい味噌がたくさん出来た。2011に作った写真の味噌は黒味噌みたいに真っ黒になり、味は濃厚です。

麹は日本の麹屋さんから取り寄せたので、あまり放射能ゼロ、とは言いきれないのだが。滅菌加工なんてもちろんしていないのでいつまでも保存できるし、腐らない。もちろん発酵食品なんで。

でもここがどうやって説明も分かってもらえないところなんだよね。発酵食品に賞味期限があるのは、それは殺菌してしまうからであって、さらに単に作る人と売る人と日本政府の都合上の問題であって、オリジナルの発酵食品は腐らない。発酵するだけ。

でも、私も買ったドブロクが発酵しすぎて爆発したりするのは嫌だから、それは仕方ないw

で、その味噌。半分以上を日本に住んでいる家族に逆輸入し、あげた。すっごくおいしいはずだけど、通常ならすでに入ってるだしを入れないといけないのでめんどくさがっているに違いない…。

昨日たまたま倉もどきを見たら、あらあれ、忘れてた。そうだいっぱいあげたんだっけ。もうすっかり味噌がない。最近はほとんど毎日和食だし、減りも早いし。
冷凍庫に2パック(500g)の冷凍みやこ麹があるので、すぐにでも作れるのだが、ここで考えた。例のマクロビ女性が「麹も手作りしてる」って、そういえば言ってたなと。

たしかに、麹を自分で作れば安いし、わざわざ日本から取り寄せる必要もない。スウェーデンにはもちろん売ってない。

20gの種麹から15キロの麹ができるらしい。米とか大豆とかは国産じゃないけどコッチで買える。麹が豊富にあれば、味噌はおろか、甘酒やどぶろく、日本酒にみりんもできる。何でも作りたい放題だ!これはやらないといけないんじゃないかしら、アヤーアントワネット?

とはいえ、手元に届くのに約1-2週間、種麹から麹を作って1週間、その麹から味噌を作って待つ事最低3ヶ月以上。あーその間に今手元に残ってる味噌で足りるかなー。とりあえず、冷凍みやこ麹で作っておくかな?

というわけでとりあえず、ネットで買った種麹をママンに送ってもらう予定。20g買ったけど、そんなに急に沢山は使わないので、小さじ2杯位をお年玉袋に入れて定型郵便で送ってと頼む。

さてさて、白いお粉は無事にスウェーデンに着くのでしょうか?エコロジーの大豆も買っておかなくちゃ。

2014年10月18日土曜日

砂糖断ちして離脱するの。



いよいよ、実行だ。写真はある日のお献立一例。スウェーデンで毎日玄米食べてるよー。

さて、気になりながらもやっぱり避けて通りたかった体の問題。もうこれ以上太れないし、脳梗塞再発は嫌だ、
旦那の体の事もすごく気になってたし、軽い気持ちで「砂糖絶ち」を昨日突然提案、今日からしてみることに。

砂糖断ちすると、ダイエット効果よりも肌がきれいになったり、視力が良くなるんだと。へええ。

でも、きっかけはマクロビオティックを実践してる方が「脳梗塞は、左の脳だったら砂糖が原因って言われてるよ」と言ってたから。砂糖が血管をおかしくするのはなんとなく分かってたし、日本に帰って、おいしいお菓子を「スウェーデンで食べられないから」っていって、いつもより多く食べてたのが原因ってのも、なんとなく分かってた。

砂糖。私の全て。でも、やめてみれば何か変わるかも。
しかも、今までだったら多分絶対やめられないし、やめる気にもならなかっただろう。でも。いいアイデアがふと浮かんだの。

「砂糖断ちして願掛けするのはどうだろう」

もっと後ろの人たちを見たい、聞きたい、話したい。ヘミシンクでもっと体験したい。幽体離脱して空を飛びたい、宇宙に行きたいって夢を砂糖断ちして、叶えるのだ。

フルーツは普通にたべるけど、お菓子とかデザートは食べない、料理にも砂糖を使わない。本ミリンはどうしようかまだ悩んでるけど、使わない方向で。甘みを口にするとそれが呼び水になりそうな気もするし。
結構これだけで、普通の甘いもの好きな女は悶絶するだろう。私も多分するかもしれない。でもいつもより少し冷静なのは、自分はかつて禁煙に同じような方法で成功し、もうタバコを吸っていないからだと思う。
できる気がする。ってか、できて宇宙に行きたいの。離脱するの。離脱するまで砂糖断ちするの。

問題は、離脱前にもし本当に完全にやめられちゃったら、ということだ。

自分にとって砂糖断ちが辛くなくなってしまったら、それは願掛けにならない!!
あとはなんだろうか。いよいよ断食?それともアニメ断ち?うわあ、それも辛いな…w

2014年10月15日水曜日

ストックホルムの幽霊屋敷本。



一週間程、スペインのカナリア諸島というところに旅行して来たの。ちょっと前に同じスペインのマヨルカ島に行って来たばっかりだったから、ちょっと気が引けてあんまり他の人に話してなかった…フェイスブックとかに日程書くと空き巣に狙われるって聞いたのもあって。

そして今週から、こりずに英語の学校に通い始めた。今度は夜間の時間帯だ。午前中と午後をフル活用して、ついまったりしてしまう夜にお勉強なんて効率いいわー。夕飯も少し抑えられるしね。

で、こっからが本題。
月曜日に、ネットで調べて興味深かった「ストックホルムのお化け屋敷」の本を買った。

これはスウェーデン語で書かれてて、何とも勉強しがいのある本なんだけど、実は「教会百物語」って教会萌エーな方のサイトで見つけた本。勝手にリンク貼って、勝手に宣伝してごめんなさい!サイト内の写真と表紙が違うのは、初版じゃないからですよ。でもよくわかんないけど、この本にはちゃんと住所も載ってる(初版は載ってなかった?)から行きやすーい♪

で、ヘミシンクで私のガイドと妄想会話をやってると、スウェーデンの地でレトリーバル(ようするに成仏補助?)をすることが大事って言ってる。確かにスウェーデンって人口少ないし、ヘミシンクやってる人いないみたい。多分トータルで10人(推測)くらいなのかな、コミュもないし。そもそもスウェーデンでのヘミシンクインストラクターに「他に人いないですよ」と言われたばかりだったし。

そーか、スウェーデンだって世界大戦参入しなくたってかなり生臭い歴史はいっぱいあって、成仏しない方々はまさに「放置」状態なわけですか。フムフム。でも、どこに幽霊がいるかなんてわからんよ…って思ってたところにこの資料ヒット!(サイトも含め)ですよ。

で、最近、オラクルカード(タロットカードの一種)みたいなめんどくさいものじゃなくて、もっと簡単に後ろの人とコミュできないかなと思ってひらめいたのが、「Yes/No」アプリ。スマホにダウンロードして、質問するだけ。携帯を振れば、即答えてくれる。

ここでポイントなのは、このアプリそのものが答えてくれるんじゃなくて、後ろの人が操作して答えてくれてるんだってこと。アプリはただの道具で、こっくりさんの10円玉でしかないってことだ。間違えないでね。

そのアプリで、この幽霊屋敷の本を安く手に入れられるか聞いていって、最終的に「オーデンプランの近くのスタッドミッションにあるよ」って答えになった。もちろんイエスノーで答えられる聞き方をして得た答えだけど。

で、眉唾ながら実際にそのセカンドハンド店に行ってみた。あったんだよこれが!!探してる本を見つけるなんてすごく難しいのに!!本の定価は265krだった。高え…でもこれを50krでゲトした。4千円が750円ですよ。しかも綺麗。読んでないっぽい。特にサインもなし。うむ。

見つけたときはさすがにちょっとブルっとした。後ろの人と上手くコミュニケーション取れてるっぽい、私?

自分の見解では、特にこの本は私と私の後ろの人にとって大事な本だったのだと思う。だからずばり、ぴしゃり、というわけだ。まあ、じっくりスウェーデン語の本を解読していこうと思う。自分の好きな分野ならモチベーションが保てるし、きっと飽き始めたりしたら、後ろの人がちょっと飴ちゃんをくれたりしてうまく操ってくれるんだろうと思う(笑)

さて、このアプリには続きがあって、授業の課題図書も買わなければいけなくなったので再び使ってみた。しかし。特定された店に行ってもない。もう一度聞いてみると他の店にあるという。で、行ってみるとない。でまた聞き直す。これで3件まわったわけですょ。でもない。英語の名作本だったから、幽霊屋敷本とはまた違ったレア度だったにしても、ちょっと私もイラッとした。何だよ後ろの人。

イライラしたまんま、今度は別の用事を済ませてビルから出た後路地を曲がったら、警察の立ち入り禁止テープが貼られて次のお目当てのお店に行けない。なんか銀行強盗がなんとか、と警察官が言ってるらしい。私はよくわかんないけど、まあ歯磨き粉はいつでも買えるから…と予定変更して図書館に。結局課題図書は借りたけど、本当は書き込みとかしたかったから、買いたかったのに。

結局テープの場所は逃走時に使ったバイクかなにかが見つかって現場検証したとこだったらしい。このストックホルム市内で昨日起きた銀行強盗はまだ捕まってないわけだが、夜ダーリンに「危ない目に遭わなくてよかった」と言われてちょっとアプリに聞いてみた。

「もしかしてこのイラッとする一連の本屋引き回しは、私がこの銀行強盗に遭遇する可能性があったから引き止めたってことなの?」

答えは「Yes!」う~ん、まゆつばぁ~~~~!!

2014年10月13日月曜日

3)幸せはどこにある。〜ももと満月までの8日間。



ももは砂の中でぺぺぺぺ言いながらもがんばってじっとしていた。というのも、砂浴を試してみたかったからだと言う。出かける直前になって、買った植物の薬効の本に、砂の中に埋もれると体の中の毒素が砂によって排出されると書いてあったので試してみたかったのだろう。しかし、意に反してあまり効果を感じられない。本を読んだり日傘を調節する為に両腕を出したからかととも思うが、トトロに「つまらん」と言われるまでビーチで寝ていたももは、あるおじさんが自分をじっとみているのに気づく。「そんなに珍しいか、砂に埋もれているアジア人は」と思うが、確かにアジア人は珍しかった。というよりも、自分以外にビーチにアジア人がいない。みんなおっぱいをべろべろ出している、体重は絶対三桁を超しているおばちゃんばかりだ。

しかしすぐにももはその思いが間違っていたことに気づく。砂から出てうつぶせになったとたん、何か遠くの方でたくさんの人が固まっているのに気づく。トトロにあれはなんだと聞くが、トトロの方こそももが指差して初めてそっちの方を見たという。なんて空気の読めない奴だ、とつくづく思う。特にこの男は探し物ができない。目の前にあるものをずっと探し続ける。よくよくよくよく聞くと、どうやら間違ったイメージを目標にして探していることがわかる。最後に触ったところを考えない、同じところにあったものは今どこにあるか考えない、直前に変えた袋の色など考えない。実際に探しているものと脳内イメージが違う色や形状のものも、目の前にあっても見つけられない。現実の世界とは「自分が見ている世界」に他ならないわけであり、ということは、この巨漢トトロは、探しているものが無くなった世界に生きていることに他ならない。そしてこのことにトトロは気づいていない。こういう物の見方をしているから、見た物しか信じない、とか学者や世間が言っているから信じるという受動的な考えになる。これはいつか何とかしないといけないと思いつつ「あれ」に戻る。

あれは何だと聞いたももが、あれは何だと聞かれたトトロに説明する。さっき救急車らしきサイレンを聞いたが、それがこのビーチに来たとは気づかなかった。ももを見ているように見えたおじさんも、実はサングラスごしにこの事態をじっと見ていたのであった。釘づけとはまさにこのことだ。

体勢を変えてみた砂だらけのももは、大勢の隙間から上下に動く紺の制服の男性、おろおろしている白人の水着女性あたりから「もしやリゾートに来て泳ぎを楽しんでいた白人のおじさんが溺れたか?」と推測する。推測はあくまで推測でしかないが、見れば海の中には泳いでいる人は誰もいない。大勢の人の集まっている場所、道路に横たわるアンビランスの車三台、走ってくる白い服の人や青い服の人たち…さらに、なかなか運び出されない本人。

こういう場合、生きてる方が確立少ないんだ、とももは思う。生きているなら、すぐにでもタンカーで運んで病院に向かっているはずだ。でも、人を変えて何度も何度も上下運動しているのを見ると「ああだめだったんだな」と思う。

おろおろしている女性のことを考えた。楽しいバカンス。旦那が楽しみにしていたバカンス。つね日頃は口うるさい旦那だけど、愛しているし、今や孫もいる。さっきまでビーチレストランでビール飲んで美味しくないハンバーガーの文句言ってたじゃないの!

ももとトトロがビーチから帰るときにもまだ大勢の人たちは帰ってなかった。ももが気がついてからもゆうに1時間は超えている。帰り道、壊れた信号は無視して、おろおろしている女性のことを再び考えた。今夜は一人でとりあえずホテルに帰るのだろうか。相方は病院に横たわる中、いつまでもビキニ姿でもいられない。行きは二人、帰りは一人の飛行機内。だめ、私なら絶えられない。誰か一緒にいてもらわないと無理。一人であの家に帰りたくない。楽しいバカンスを楽しみに出て行ったあの家に。

途中で気分が悪くなった。当たり前だ。ももは夕食時のバルコニーでトトロもちょっとあのことを考えたと言うのを聞く。ホテル滞在中、半分を自炊した二人にとって、バルコニーで鳩と戦いながら食べるご飯はすでに手慣れたものだった。

鳩は、起きているうちの90パーセントを食べ物探しに費やすとどこかで読んだ。鳩にとっての幸せとは何か。食べ物をお腹いっぱい食べられることか。人間にとっての幸せって何だ。今更手あかの付いた疑問ながら、ますますマスマス分からなくなる。何だよ幸せってよ。

仮説。幸せって「今不幸せだ!」って思った直前こそが幸せな時期なんじゃないの?死んだらもう考えられないし。(と、とりあえず死で区切りをうっておく)ゆでがえるみたいに徐々に不幸せだなあと思ってるとしたら、いつからそんなこと考え始めたと考えてみれば、そこが幸せだった時との分岐点なのではないか。ようするに、幸せな時は幸せかなんて考えない。幸せかどうか考えないときこそ、正真正銘の幸せな時なんじゃないかと、ももは仮説を立てた。でも、本当にひどい状況の中なら、そんな事考えてる暇もないかもしれない。ますますわからない。バルコニーは、膨らみつつある月で明るい。

じゃあ、鳩は?反対にいつもお腹空かせてるから、食べた瞬間がいつも幸せで、次の獲物を探し始める瞬間幸せでなくなる?鳩は人間が追い払うだけで、本当に捕まえたり傷つけたりしないと知っている。鳩にとって脅威は人間じゃなくて他の動物とか同じ鳩同士だろう。

人間だけが、不幸せだと感じる直前まで幸せでいられる数少ない生き物かもしれない。翌日、近くで半旗を掲げているホテルを見かけた。あの人たちのホテルだろうか?別の人だろうか?最初ももは半旗の意味が分からなかった。こういうしいさなことで、自分にナショナリズムにかけていることに気づかされる。

さて、芋が主食のスウェーデンに住みながら、大胆にももう芋は食べるまいと誓いをたてるもも。ももはカナリア諸島名物の芋ソース「モホソース」が気に入って、芋とモホソースばかり食べていた。さらにお土産用を探すが、当たり前の様に全ての瓶詰めはケミカルみっちりで毒々しく美しい色が付いている。最終的にスパイスだけのもの(自分でオイルと酢を入れてねってやつ)を見つけて大量購入する。自分で作れるなら、保存料はいらぬ。腐らないものは、食べたくない。特に病気をしてからは。だってその分たくさん「体に悪い砂糖」を食べたいもの。砂では毒素排出できなかったし。じゃあ手作りソースならもっといっぱい芋食えるやろ。あは。

このあと、さらにビーチでももは特等のくじでiPODを当ててしまうのであった。

2014年10月10日金曜日

2)名産にも上手いものあり〜ももと満月までの8日間。



山も頂上付近になって、一人セニョールが立ち上がりフルーツを差し出した。走っている車の前で、である。人間は車が止まると信じて疑わないポジティブシンキングをどうして戦争回避に利用できないのかと毎回思いつつ、苦笑いでセニョールを無視するもも。ちらりと見た感じでは、フルーツの他にも飲み物やスナックなどを売っている様子。こんなヘンピなところ、しかも止まろうかとも思わせない平凡な景色の道。セニョールの経営戦略を聞きたくなるが、スペイン語は分からないのでエアー納得して進む。

チェリゾーの工場がある、と言うだけでレンタカーでくねくね走って来た二人は、目的の地へ到着するが、ここで時計を見て愕然とする。スペインにはシエスタをする文化がある。午後お昼寝しちゃうために一時店を閉めるのだ。レストランやカフェは観光客の為に開いているところもあるが、普通の店は4時半まで開かない。ゆっくりランチをタパスしてトロピカルビール(普通のライトビール)とアグアコンガスで時間をつぶしても、まだまだ開店時間には間がある。しかも、そもそもそのチョリゾーの店がどこにあるのかわからない。

空港でかった「何でもトップ10シリーズ」のグランカナリアバージョンでは、この街のどこにその工場があるのか書いてなかった。何でもトップ10シリーズというのは、いささかドラえもんの学習マンガのようなタイトルだが、こういった本では藤子・F・不二雄はもちろん絵を描いていない。子供の頃はそれが何だか商業的で大人が自分をだまして「ドラえもんだよー漫画だよー面白いから読みなよー」と言いながら勉強させる姿勢に断固として立ち向かったものだ。要するに勉強しなかった。

トトロが自身の栄養源であると認めていないビールなのだが、地ビールがあるというので一本だけ買ったワインショップで試しにチョリゾーのありかを聞いてみたところ、ノーズヘアーの美しいスペイン人の店主が店の場所を教えてくれた。なんて優しいのだ。しかもその店の近くに「閉まっているけどチェリゾー人形が軽やかに踊っているウィンドーディスプレイ」を見かけているので、そこが店ではないのかと聞くが違った。街全体でそのチョリゾーをワッショイしているらしい。このチョリゾーは、ソーセージの様な形をしているが、実際にはペースト状のものをパンなどにぬって食べる。少々油っぽいがとても美味しいという珍しい「名産」だ。

確かにホテルの鎮座する街に戻ってみれば、スーパーの肉コーナーでも基本のこのチョリゾーが売られていた。ただし、数倍高い。
地元テロールでは、500g買って、2.80ユーロであった。1キロで5.6ユーロである。しかし、都会の街中だと1キロ12-14ユーロで売られている。グランカナリアに行くならテロールでチョリゾーを買うべし!!住所は C/Fuente De La Higera,4 CP.35330, Terorである。英語は話せるかと聞いてイエスと言ったのにまったく通じなかった店の人は写真を取ってもいいかとジェスチャーで聞くと、店の横に並んでる圧巻チョリゾーカーテンも見せてくれたのだった。行くべし、LOS NUECES。

すっかりトリップアドバイザーのような雰囲気から一気に脱出を試みる筆者をよそに、ももは道すがら、びわの木を見つける。見た感じはびわの葉にそっくりで、まだ実はない、というかもう終わっている。車をなんとかナダメて止めてもらい、びわの木の家の反対側の住人にジェスチャーでとってもいいかと聞くと「シーシー」いうので、何枚かかっぱらってきた。これを乾かせばびわ茶になる。何かと体にいいお茶らしく、しかもオロナインのように「何にでも効く=何ににも効かない」ではないという雰囲気ムンムンだ。ももの実家にも、ももが食べたびわの種から芽が出て大きくなり、今や小さいながらも実がついて近所のからすや小学生達につまみ食いされているびわの木がある。実家は土手の上にあるのだが、土手の下も敷地なので、植えてみたらなっちゃった、とはもも母の弁。だから堂々と誰かが採って食べられる。

チョリゾー街の前には、道端になっているサボテンの実も採取を試みるが、これにはもももまいった。大きいトゲならともかく、目に見えない程のトゲが手にささって、どこかに触れるたびに小さな痛みを感じる。そしてそれがよく見えない。最後には幻覚のような擬似痛も発生し、ももの心をとげとげと刺していたのだった。もう採りません、サボテンは。そんなに美味しくなかったし、種ばっかりで食べにくいしと一言多い嫌みを言って自分を満足させるのに長けた女が二日後に迎えるのは「死じゃないかと思う」出来事であった。

2014年10月9日木曜日

ももと満月までの8日間。1)中の男



もも、は必死に遊歩道を歩いていた。壊れた信号が余計に彼女の神経をペロリと舐めていく。
信号が壊れてるなんてあり得ない。日本じゃ絶対にあり得ない。と心の中で二回つぶやいた彼女は、それで自分に対するひどい仕打ちに少しでもリベンジできたと思って満足した。

ちなみにもも、とは偽名である。昔の彼女の同僚が「あんたはももレンジャーみたいだ。くねくねしたり、うふん的な女らしさをアピールするが、中には男が入っている」と言った。彼女もその話は納得した、という経緯を知っている著者が気を利かせて付けた偽名だ。本人がももと呼ばれていることは知らない。名前というものは、本人以外が本人と他人を区別する為に他人が使う記号なのでかまわないと断定する。多分ももも納得するだろう。わかりのいい女だ。

さてももは、わかりのいい女だが、疲れやすい女でもある。美しいビーチから体を砂だらけにしてホテルへ戻る道は、まるで「おもいこんだら」を引く星飛雄馬のような気分にしてくれる。ここはもともとリゾート開発された場所だから、ホテルは全て坂の途中にあり、山の背面に座るかの様にして立っている。しかも白いから眩しい。こんな暑くて遠くて眩しい急な坂道、なんのために作ったんだ。はい、私のためです。一人ぼけつっこみも手慣れたものだ。

ももには旦那がいる。「もう自分には嫁がいるから、わざわざおしゃれしなくてもいいだろう」というのが口癖のトトロだ。もちろんトトロも偽名である。トトロが多分「早く人間になりた~い!」という夢を叶えたのなら(それが夢かどうかは別として)まさにこうなる、といった風貌の男だ。

トトロはしかし、車の運転もできる。しかもマニュアルだ。レンタカーを借りた翌日、スペインのレンタカー事情など知らないももとトトロは、まず手に入れたキーからどうやってエンジンをスタートさせるのか、からわからない。2分ほど浦島太郎になったあと、島の反対側までのドライブが始まった。

トトロが「ここは日本ではないか」という程いろは坂な上り道をセカンドでぎゅんぎゅん登って行った。しかしももはこの日本説を断固として拒絶する。「鏡がない」のだ。対向車を確認する鏡がないから、向こうから車が来たら恐ろしく恐ろしい道。しかも時々道の向こうが天空だったりしてますます怖い。皆さん、誰もいないところで車がクラクション鳴らすの許してちょうだいと祈るもも。トトロも「ブレーキかけるの手伝ってくれてるのは嬉しいんだけど、全く効果ないから」と言われる程、全身硬直してエアーブレーキをかけまくっていたのだった。中の男は心でつぶやいた「ちっ」が聞こえなくてよかったと安堵しながら、道はチョリゾーペーストへと続くのであった。