2011年11月7日月曜日

悲しいお話と魔法の液体。


アストリッド・リンドグレーンさんという作家がスウェーデンにはおりまして、彼女の作品は、それはそれは国民中から愛されていたのでした。

スウェーデンに移民してくる人々は、スウェーデンの歴史を習い、スウェーデンの風習を習い、スウェーデンの愛するものを勉強するのでした。

ある、遠い東の国から来た少し盛りをすぎた女の子(笑)がスウェーデンにやってきました。スウェーデンに昔から住む巨人(笑)と結婚するためです。そして、スウェーデンの言葉を学校で勉強しますが、いくら勉強しても先生からは卒業テストを受けることを許してもらえないのでした。

そこで彼女は、スウェーデンでお友達になった同じ国の人から、魔法の学校の事をこっそり教えてもらいました。その学校は、学校に行かずに、自分の家で勉強して、ネットと言われる網の中に宿題を入れれば寝ているうちに宿題は遠くにすむ先生に届き、宿題を見てもらえるという風なのでした。

女の子は大層喜び、自分の家で勉強し始めました。しかし、けっしてその勉強は簡単なものではありませんでした。6週間の間に、先生にみてもらう宿題と、スウェーデンの言葉で書かれた本を2冊も読まなければならないのでした。

女の子はたくさんの本の中から、アストリッド・リンドグレーンという女性の書いた子供向けの本を読み始めました。それは、とても悲しく、そして胸に残る素晴らしい物語なのでした。

そして女の子は、遠い東の国に住んでいた時に飲んでいた、白く粒から作った魔法の液体の味が忘れられず、スウェーデンでその魔法の液体を自分で作ることに密かに成功したのでした。

女の子はその魔法の液体を飲みながら、アストリッド・リンドグレーンさんの書いた「Bröderna Lejonhjärta(邦題:はるかな国の兄弟)」という本を読み始めました。

するとどうでしょう。始まりがあまりにも悲しかったのか、魔法の液体の魔法が強すぎたのか、女の子は途中で自分でも驚くほど声を出してわんわん泣き始めてしまったのでした。

これには、一緒に住んでいた巨人もびっくりしてしまいました。巨人もこの魔法の液体を飲んだのですが「美味しくない」と言ってあまり飲みませんでした。しかし、巨人はこのお話を知っていたので、女の子に「このお話は悲しくないよ、悲しいけれど、とってもよいお話だよ」と言い聞かせてくれるのでした。

女の子はその日は本を読むのをやめ、ベッドでぐっすり眠りました。次の朝目を覚ますと、巨人は四角い石でできた山へ柴刈りに行ってしまったあとで、しかも朝ではなくお昼でした。(笑)なぜか魔法の液体のせいで頭がしくしくと痛みます。しかし、女の子はよく眠れたおかげで元気になったのでした。

そして、なぜ昨日の夜、そんなにも悲しかったのか考えてみることにしました。すると、すぐに原因がわかりました。それは、アストリッド・リンドグレーンさんの言葉の魔法なのでした。彼女のお話はとても不思議なお話ですが、なぜか誰かが死んだり、行方不明になったりする時、新聞やラジオといった公共のマスメディアを使うのでした。おかげで女の子は、そのお話がアストリッドさんが作ったお話だと知っていても、お話の中に出てくる素敵なお兄さんが死んでしまうところを読むと、本当に大事な人が死んでしまったかのように感じてしまうのでした。

女の子は「恐るべしスウェーデン人作家のテクニック」と思いながら、今度は魔法の液体なしでお話を読み始めました。今度はきっと、女の子も巨人に心配させる事なく読み終えることができるでしょう。
おしまい。

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